それはKが体験した、忘れられない一夜の出来事です。友人たちとキャンプを計画した彼は、遠く離れた森の中で一夜を過ごすことにしました。その森は地元で”忘れられた場所”と呼ばれ、数奇な噂が囁かれていましたが、Kと彼の友人たちはその話をあまり真に受けていませんでした。
彼らが森に到着したのは夕暮れ時で、まだ薄明るい中、テントを設営し、火を起こしました。一行は笑いながら夕食を楽しみ、夜の静寂が深まるにつれて、森の奥深くから不気味な風の音が聞こえ始めました。
食後、友人の一人が偶然にも近くの廃屋を発見しました。彼らは興味本位でその廃屋の探索を決め、懐中電灯を手に入れて暗闇の中を進みました。廃屋は古びており、壁は苔むし、扉は半分壊れていました。内部に足を踏み入れると、彼らは異様な冷気を感じ取りました。
廃屋の中は予想以上に広く、複数の部屋がありましたが、どの部屋も荒れ放題で、古い家具が無造作に放置されていました。Kたちは部屋を一つ一つ探索していき、最後の部屋にたどり着いたとき、奇妙な発見をしました。床の一角に、大きな血の染みがあり、その上には古ぼけた人形が転がっていました。
その人形は不気味に古く、目はこちらをじっと見つめているようでした。Kはその人形に何となく悪寒を覚え、すぐに部屋を出ようと提案しましたが、その瞬間、外から閉じ込められたような大きな音がしました。扉が何者かによって閉められたのです。
恐怖に駆られた一行は、廃屋からの脱出を試みましたが、扉は固く閉ざされて動きませんでした。その時、家のあちこちから奇妙な嗚咽のような声が聞こえ始め、廃屋の中で温度が急激に下がり始めました。彼らは必死で窓を破り、何とか外に脱出しました。
外に出た彼らは、背後から家全体がゆっくりと崩れる音を聞きました。振り返ると、廃屋は奇妙な光に包まれ、しばらくすると音もなく消え去りました。
キャンプ地に戻ったKたちは、その夜の出来事について話し合いましたが、誰もその廃屋がどこから来たのか、なぜ消えたのかを説明できませんでした。地元の住人に話を聞いても、そんな廃屋の存在を覚えている者はおらず、彼らが体験したことが現実だったのか幻だったのか、未だに解明されていません。
その夜以来、Kは森に近づくことを避けるようになりました。何が彼らを廃屋に導いたのか、そして何が彼らを追い出したのか、その答えは今も霧の中に隠されたままです。
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